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英語圏の音楽を中心にお届けします。海外メディアに埋もれている情報などゆるゆると。ちなみにNYは行ったことありません。

大切な人を失ったときに。Labrinth 「Jealous」の新しい聴き方

「Jealous(嫉妬)」と題された曲は失恋ソングと決めてしまいがち。少なくとも大切な人が亡くなったときはテーマ違いと感じて選ばないもの。The X Factor UK 2015に出場したJosh Daniel(ジョシュ・ダニエル)は、3年前に亡くなった親友に向けてLabrinthの「Jealous」を選んだ。

▼サビ部分の歌詞

I wished you the best of
All this world could give
And I told you when you left me
There's nothing to forgive
But I always thought you'd come back, tell me all you found was
Heartbreak and misery
It's hard for me to say, I'm jealous of the way
You're happy without me

「幸せになって欲しいと思ったし、別れの時にも、気にすることないよって言った。でも、ずっと思ってた。いつか君が戻ってくるんじゃないかって。やっぱり、いいことなんてなかったよって。こんなこと言いづらいけど、嫉妬してる。僕がいなくても君が幸せにしてることに嫉妬してしまうんだ」

Josh Danielはこの曲を、自分がいなくても天国で幸せにしている君に嫉妬してしまう、という文脈で解釈しました。彼の歌声からはやるせなさ、残された者の苦悩、彼の分も生きるべきなのに塞ぎこんでしまう弱い自分への苛立ち・嫌悪、そんなものが全部伝わってきて違和感は全くありません。

審査員のSimonが泣くことは、ごくごく稀です。このオーディションの数日前にお母さんが亡くなったこともあり、感じ取ったのでしょう。Simonのこれまでにない反応に、他の審査員もおどおどしています。

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彼は3年前に親友を亡くしてから、長らく鬱状態であったそうです。そんなとき、この曲と出会って、すごくしっくりきたのだそう。

4年前にも実はX-Factorに挑戦していて、その時は亡くなった親友のThomasが応援にきています。そんな思い出の場にもう一度立つのは相当なエネルギーがいったはず。今後の選考もぜひ頑張ってほしいです。

▼2016年4月にスタジオレコーディングverが発売されてました!めちゃいいー!!

Jealous

Jealous

  • Josh Daniel
  • シンガーソングライター
  • ¥250

ついでにLabrinth(ラビリンス)による原曲も聴いてみた。めっちゃいい。

もっと売れてもいいのでは?名前を聴いたことある程度でしたが、一気にファンになってしまった。「嫉妬」といいながらも、ただただやるせなくて、相手のことは一切責めていないのね。本当にいい男じゃないと書けない失恋ソングだなあと思いながら調べたところ、失恋ソングではありませんでした。これはLabrinthが自分たちのもとを去った父親に向けて書いた曲とのこと。なんでも4歳のとき、彼を含む9人(!)の子どもたちと妻を置いて出ていったとのこと。幼くして離れたので思い出もあまりなく、平気なつもりでいたけれど、父親が新しい家庭を持つことになったと知って嫉妬したときの気持ちをこの曲で歌っているそうです。なるほど。大切な人を失う場面というのはさまざまですが、それぞれに共通して寄り添える名曲かもしれません。

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 2016/5/8に加筆